1. SWIFTの概要と運営体制
SWIFTとは?
SWIFT(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication、国際銀行間通信協会)は、世界中の銀行間で安全かつ迅速に国際送金を行うためのメッセージングネットワークです。1973年に設立され、現在では200以上の国と11,000以上の金融機関が加盟し、国際的な金融取引のインフラとして機能しています。
SWIFTの運営体制
SWIFTはベルギーに本社を置く非営利の協同組合であり、参加する銀行・金融機関が出資して運営されています。特定の国や政府が直接運営する組織ではありませんが、ベルギー国立銀行を中心とするG10中央銀行の監督を受けています。
SWIFTの監督機関
- ベルギー国立銀行(NBB)(SWIFTの主要監督機関)
- G10諸国の中央銀行(米国FRB、欧州中央銀行、日本銀行など)
- 金融安定理事会(FSB)との連携
このため、SWIFTは一応「中立」を掲げていますが、欧州やG10諸国の影響を受けやすいのが特徴です。
2. SWIFTの機能と圧倒的な市場シェア
SWIFTの基本機能
SWIFTは資金の移動を直接行うわけではなく、送金に関するメッセージを送受信するシステムです。各金融機関はSWIFTネットワークを通じて、送金指示や決済確認などの情報をやり取りします。
具体的な機能としては:
- 国際送金指示の送信(例:A銀行 → B銀行への送金指示)
- 貿易金融(信用状L/C発行)
- 証券取引の決済情報送信
- 資金管理(Cash Management)
SWIFTの圧倒的な市場シェア
現在、国際送金の大部分はSWIFTを経由しています。特に、米ドルやユーロ建ての送金では、SWIFTが事実上の標準になっています。
しかし、近年ではSWIFTに依存しない送金システムの発展も進んでいます。
3. SWIFTの代替となる国際送金システム
SWIFT以外にも国際送金の手段は存在しますが、規模ではSWIFTには及びません。
① CIPS(中国)
- 中国が開発した人民元決済システム。
- 主に中国との貿易決済に利用されるが、国際的な普及度は限定的。
② SPFS(ロシア)
- 2014年のクリミア併合後、ロシアがSWIFT制裁に備えて開発。
- 2022年のSWIFT排除後に拡大中だが、国際的な利用は限定的。
③ SEPA(欧州)
- ユーロ圏内の送金に特化。
- 欧州内ではSWIFTよりもSEPAが優先されるケースが多い。
④ 仮想通貨・ブロックチェーン
- Ripple(XRP):銀行間の国際送金を迅速化。
- ステーブルコイン(USDT, USDC):ドル建て送金手段として利用増加。
➡ しかし、規模では依然としてSWIFTが圧倒的である。
4. SWIFTのリスクと影響
① 政治的影響を受けやすい
SWIFTは欧州の法的枠組みの下で運営されているため、EUやG10諸国の制裁措置の影響を受けやすいです。
- ロシアのSWIFT排除(2022年)
- ウクライナ侵攻を受け、EUと米国がロシアの主要銀行をSWIFTから排除。
- ロシアの国際送金が制限され、経済制裁の大きな一環となった。
- イランのSWIFT排除(2012年・2018年)
- 核開発を理由に、イランの銀行がSWIFTから締め出される。
- イランの貿易決済が困難になり、経済制裁の影響が拡大。
② サイバー攻撃のリスク
- 2016年、バングラデシュ中央銀行がSWIFT経由のハッキングで8,100万ドルを不正送金される事件が発生。
- 以後、SWIFTはセキュリティ対策(CSPプログラム)を強化。
5. 日本がとるべき対応策
① SWIFTに依存しない送金手段の確保
- 日本銀行はCBDC(中央銀行デジタル通貨)の研究を進めている。
- 日本企業の海外取引の安定性を高めるため、SWIFT以外の送金ネットワークの活用を検討すべき。
② フィンテック・ブロックチェーンの活用
- 仮想通貨やブロックチェーン技術を活用した国際送金の実証実験を進める。
- 民間企業(Ripple, Wiseなど)と連携し、新たな送金インフラを確立。
③ 経済安全保障の観点からの政策強化
- SWIFTが経済制裁の手段として使われる以上、日本も独自の送金ネットワークの確立を視野に入れる必要がある。
6. まとめ
✅ SWIFTは国際送金の標準であり、圧倒的な市場シェアを誇る。
✅ ベルギーに本拠を置く非営利組織だが、EUやG10諸国の影響を受けやすい。
✅ 政治的制裁の手段として使われるリスクがあり、ロシア・イランなどがSWIFT排除の影響を受けている。
✅ SWIFT以外の送金ネットワーク(CIPS, SPFS, ブロックチェーン)もあるが、まだ規模が小さい。
✅ 日本も送金手段の多様化を進めるべきであり、CBDCやフィンテックの活用が重要。
➡ SWIFTの重要性は今後も続くが、日本は送金の選択肢を広げる戦略が求められる。
参考サイト
- SWIFT公式サイト
https://www.swift.com
(SWIFTの基本機能、ガイドライン) - 日本銀行(BOJ)のCBDCに関する情報
https://www.boj.or.jp
(中央銀行デジタル通貨(CBDC)の研究・動向) - 金融庁(FSA)- 国際送金とAML対策
https://www.fsa.go.jp
(SWIFTのAML対策、制裁関連の情報) - 欧州中央銀行(ECB)- SEPAと国際送金の仕組み
https://www.ecb.europa.eu - 国際決済銀行(BIS)- SWIFTと国際金融のトレンド
https://www.bis.org - ニュースサイト(Reuters, Financial Times, Bloomberg)
- https://www.reuters.com
- https://www.ft.com
- https://www.bloomberg.com
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