2025年、トランプ大統領の再登板とともに再始動したアメリカの行政改革。その中でも特に注目を集めているのが、農務省（USDA）改革です。
トランプ大統領はこの巨大省庁に対して、長年にわたり「非効率と無責任の象徴」との問題意識を持ち続けており、それにメスを入れるために選ばれたのが、ブルック・ローリンズ氏です。
この記事では、ローリンズ長官の就任背景、彼女の資質、そして着手した具体的な改革内容までを一気に解説していきます。
なぜ農務省は問題視されてきたのか？
農務省は年間1800億ドルもの予算を持ち、全米の農業、食品安全、補助金、栄養支援を担う一大官庁です。
しかしその実態は、煩雑な事務手続き、重複する予算、形骸化した支援制度など、多くの構造的問題を抱えていました。
トランプ大統領は、「納税者が汗水流して払った金が、使い道も分からぬ事務費で消えている」と強く非難。
農家の現場に届くはずの資金が、膨大な官僚機構に吸収されているという問題意識が、農務省改革の原点にあります。
ブルック・ローリンズとは何者か？
トランプ大統領が農務長官として白羽の矢を立てたのが、ブルック・ローリンズ氏。
テキサス出身の保守系シンクタンク代表であり、トランプ政権一期目ではホワイトハウスの国内政策会議局長を務めた実力者です。
彼女の最大の特徴は、「Yes Woman」ではないという点です。
単にトランプの意向に追随するだけでなく、**理念を共有しつつも、政策の実行力と独自の判断力を持つ“改革の実務家”**としての信頼を勝ち取りました。
その姿勢は、トランプ政権の中枢であっても珍しく、政権退任後にAFPI（America First Policy Institute）を設立してトランプ政策を支え続けた点でも、彼女の忠誠と実行力が証明されています。
改革に着手した7つの柱
2025年2月の就任以降、ローリンズ長官は立て続けに農務省の構造改革と農業政策の見直しに着手しています。以下、主要な取り組みをご紹介します。
① SNAP（フードスタンプ）の不正受給取り締まり強化
不法移民による給付制度の不正利用を防ぐため、各州に対し移民ステータスの厳格確認を指示。
「SAVEシステム」や死亡記録との照合を強化することで、数十億ドル規模の財政無駄を削減する狙いです。
② メキシコからの家畜輸入に対する安全保障措置
メキシコで発生した寄生虫「ニュー・ワールド・スクリューワーム」への対応が遅れれば、家畜輸入の制限も辞さないと明言。
外交レベルでも、アメリカの農業主権を守る姿勢が鮮明です。
③ 貿易摩擦による農家救済策の再展開
中国などとの通商交渉に伴うリスクを見越し、農家支援の準備を整備。
2018年のトランプ政権一期目で導入された数百億ドルの支援策に倣い、直接的・迅速な補助の体制を構築しています。
④ 国有林管理と国内木材の供給強化
森林火災のリスクを減らすとともに、木材の国内供給を25％増加させる方針を発表。
環境保護と産業振興を両立させる政策です。
⑤ 農村インフラ再生イニシアチブ
ブロードバンドの拡充、医療・教育施設の再整備など、農村部の生活インフラを総合的に底上げ。
都市と地方の格差是正を農務省主導で進めるという姿勢は、新たなUSDAの役割を象徴しています。
⑥ USDA内部の組織改革と人員スリム化
不要部門の統廃合や職員の見直しを実施。特に試用期間中のポストを中心に再配置と削減を行い、機能する組織への再構築を進めています。
⑦ 州法との対立にも対応姿勢
カリフォルニア州の家畜飼育基準法（Proposition 12）に対して、全米の農家の不利益になる可能性があるとして、連邦政府として対抗措置を検討。
これにより、州法が全米農政に与える影響にも目を光らせています。
ローリンズが“最適任”とされた理由とは？
彼女の任命は、以下のような資質が評価された結果です。
| 資質 | 内容 |
|---|---|
| 🎯 実務力 | 制度設計から改革実行まで一貫して担える力 |
| 💬 分かりやすさ | 国民目線で政策の意味を言語化し、説明できる力 |
| 🧠 政策理念 | 小さな政府・自由市場を重視する一貫した思想 |
| 💪 政治的胆力 | 反発を恐れず、構造改革に踏み込める覚悟 |
| 🤝 トランプとの信頼 | 政策への忠誠と現場的視点の両立 |
まとめ｜“Yes Womanではない”改革者に託された農務省の未来
ブルック・ローリンズ長官の登場によって、農務省は単なる官僚組織から「行動する省庁」へと生まれ変わろうとしています。
彼女の改革は、トランプ政権が掲げる「アメリカ・ファースト」政策の体現であり、地方経済と国民生活の再生を支える重要な布石でもあります。
納税者のお金が、事務の山ではなく、現場の農家と地域の未来に届く――
そんな「当たり前」を取り戻すための戦いが、今、静かに、そして確実に進んでいるのです。
✅【参考サイトと補足】
| 参照元 | URL（省略形） | 補足内容 |
|---|---|---|
| USDA公式 | usda.gov | ローリンズ氏の就任公式発表、任命理由の記述あり。政策の方針転換についても明記。 |
| NY Post | nypost.com | SNAP（フードスタンプ）改革と不正受給対策についての報道。納税者保護を前面に。 |
| Axios | axios.com | 対中通商摩擦と農家補助策の再検討について。過去の支援プログラムと比較あり。 |
| USDA公式（森林政策） | usda.gov | 国有林と木材供給に関する管理改革の詳細。 |
| SF Chronicle | sfchronicle.com | Proposition 12に関する連邦対抗姿勢の報道。 |
| Food Safety Magazine | food-safety.com | USDAの組織改革と人員整理の方針を詳述。 |
| NACo | naco.org | 地方自治体との連携による農村再活性化プラン。 |
