【徹底解説】アメリカ内務長官ダグ・バーガム氏とは?“Drill, Baby, Drill”に象徴されるエネルギー国家戦略の中核を担う人物

米国政治

2025年、トランプ政権が再び誕生し、アメリカの政策の根幹が大きく転換し始めています。その中で、特に注目されているのが内務長官に就任したダグ・バーガム氏です。彼は単なる官僚機構の責任者というだけでなく、新たに再編された**国家エネルギー会議(NEC)**の議長としても、アメリカのエネルギー政策を牽引する極めて重要なポジションに立っています。

バーガム長官は、トランプ大統領が掲げる「アメリカを再びエネルギー大国へ」という国家戦略の中核を担う人物であり、その政策姿勢は“Drill, Baby, Drill(掘れ、掘れ、さらに掘れ)”という象徴的なスローガンに凝縮されています。

ノースダコタの起業家から、政権中枢へ

バーガム氏は1956年、ノースダコタ州アーサーに生まれました。マイクロソフトへの企業売却で知られるIT起業家から政治家へと転身し、2016年から2024年までノースダコタ州知事を2期務めました。エネルギー州であるノースダコタの経済振興と資源開発に実績を残したことから、今回の政権では満を持して内務長官に指名されました。

大統領選挙にも一時名乗りを上げましたが、2023年末には撤退を表明。その後、トランプ大統領への支持を明確に打ち出し、政権中枢に加わることとなりました。

国家エネルギー会議(NEC)の議長に就任

バーガム長官の役割は、単なる内務省のトップにとどまりません。彼は新たにトランプ政権が設置した国家エネルギー会議(NEC)の議長としても任命され、全米のエネルギー政策の立案と調整を行う役割を担っています。

このNECは、アメリカのエネルギー政策を統一的に進めるために設立された、トランプ政権の象徴的な政策実行機関です。特に、以下の閣僚がメンバーとして加わっており、その顔ぶれからも「化石燃料推進体制」であることが明らかです。

  • ダグ・バーガム内務長官(議長)
  • クリス・ライト・エネルギー長官(シェール企業CEO出身)
  • リー・ゼルディン環境保護庁(EPA)長官(気候変動政策に懐疑的)
  • ハワード・ラトニック商務長官(エネルギー輸出を推進)
  • マルコ・ルビオ国務長官(エネルギー外交戦略を担当)

この布陣はまさに、トランプ大統領が最優先とする「エネルギー政策=一丁目一番地」を推し進めるためのチームと言えるでしょう。

“Drill, Baby, Drill”を現実に変える政策群

バーガム長官は就任初日から、その立場を強く打ち出しました。6つの大統領命令に署名し、連邦政府が保有する土地での石油・ガスの掘削を推進する方向を明確にしました。これには、これまで保護されていた国定記念物や自然保護区も含まれています。

このような方針は、まさに“Drill, Baby, Drill”というスローガンを政策として体現したものです。この言葉は、トランプ大統領が選挙演説などで繰り返し用いてきたものであり、「アメリカの大地に眠る資源を使い尽くすことで、エネルギー自立と経済成長を実現する」という思想を象徴しています。

内務省の役割変化と先住民・環境保護への影響

アメリカ内務省は、もともと自然資源の保護、国立公園の管理、先住民政策を担う省庁です。しかしバーガム長官の下では、その役割が大きく変化しています。

国立公園職員の削減、保護区内での開発許可、さらには先住民の聖地である地域の開発検討など、環境保護団体や先住民団体からの反発は大きくなっています。ユタ州の「ベアーズ・イヤーズ」や「グランドステアケース・エスカランテ」などの国定記念物が開発対象に含まれていることは、国内外で大きな議論を呼んでいます。

未来のアメリカが問われる4年間

このようなエネルギー体制の下で、アメリカは今後4年間、どのような国になっていくのでしょうか。

政権の狙いは明確です。アメリカを再び世界最大の資源供給国とし、国内の雇用と産業を復活させ、同時にエネルギー輸出を通じた外交的優位を確保することです。ロシアや中東諸国に依存せずとも世界市場に石油とガスを供給できる「エネルギー覇権国家」として、アメリカの地位を確立するという構想です。

一方で、再生可能エネルギー、EV、脱炭素などの分野は大きな後退を迫られています。短期的な経済回復が期待される反面、中長期的には気候変動への対応遅れ、国際的孤立、そして次世代産業育成の停滞といったリスクも指摘されています。

注目されるバーガム長官のリーダーシップ

バーガム長官の政策と指導力は、まさに現在のアメリカを象徴するものです。トランプ大統領のエネルギー戦略を地に足のついた政策に落とし込み、連邦の官僚機構を改革し、迅速な政策実行を実現しています。

この体制は、今後アメリカの社会構造、外交、環境、そして経済の在り方に大きな影響を与えることになるでしょう。そしてその中心には、国家エネルギー会議を率いるダグ・バーガム長官の姿があります。

今後のアメリカが、「化石燃料の復権」と「持続可能な未来」の間でどのようなバランスを取っていくのか。私たちはその動向を注意深く見守る必要があるのではないでしょうか。

参考サイト

公式・報道サイト

  1. U.S. Department of the Interior(内務省公式サイト)
    https://www.doi.gov/
  2. AP News: “Trump Energy Secretary Wright doubles down on fossil fuels”
    https://apnews.com/article/trump-energy-wright-climate-nuclear-00e8e540be8b61498ca87740c327eb22
  3. The Washington Post: “Interior secretary proposes development in protected areas”
    https://www.washingtonpost.com/climate-environment/2025/04/24/trump-national-monument-reductions-mining-oil/
  4. Liberty Energy – Chris Wright CEO biography
    https://www.libertyenergy.com/
  5. Bloomberg: “Burgum Takes Energy Helm in Trump Cabinet”
    https://www.bloomberg.com/
  6. Colorado Newsline: “Chris Wright: The fossil fuel CEO shaping US energy future”
    https://coloradonewsline.com/2025/04/03/
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