2025年のドイツの電動乗用車(EV+PHEV)の新規登録台数が前年から53%増加するというドイツ自動車工業会(VDA)の予測が発表されました。しかし、この予測がどの程度現実的なのか、最新の市場動向や政策の影響をもとに検証してみます。
1. VDAの発表内容
VDAの年次記者会見(2025年1月20日)では、2025年のドイツ国内における電動車市場について以下の見通しが示されました。
- 電動車の国内生産台数:前年比24%増の約170万台
- 電動車の国内販売台数:前年比53%増の約87万3,000台
- 内訳:BEV(バッテリー電気自動車)が75%増の66万6,000台、PHEV(プラグインハイブリッド)が8%増の20万7,000台
この見通しは、欧州のCO2フリート規制強化や市場のEVシフトを踏まえたものであり、ドイツが世界第2位の電動車生産拠点となることを期待しています。
2. 2025年の成長予測の妥当性
VDAの予測が現実的かどうかを、以下の観点から分析しました。
過去の成長率との比較
ドイツのEV市場は2021年に前年比73%増という急成長を遂げましたが、2024年には補助金縮小の影響で新車販売が大幅に減少(前年比36.8%減)しており、市場の勢いは鈍化しています。2025年に再び53%の成長を遂げるには、市場の回復が必要ですが、最近の減速傾向を考えると疑問が残ります。
政策の影響
2024年には政府のEV補助金(環境ボーナス)が廃止され、多くの消費者が購入を先送りしました。現在、政府はEV購入に対する税制優遇措置を検討中ですが、具体的な施策が不透明であり、成長を後押しできるかは不明です。
充電インフラの整備状況
EVの普及には充電インフラの拡充が不可欠ですが、ドイツでは充電ステーションの整備が遅れています。政府は高速道路沿いの充電スポットを増設する計画を発表していますが、2025年までに十分な整備が完了するかは疑問です。
競争環境と生産能力
ドイツの自動車メーカーはEV生産を強化していますが、中国メーカーの台頭や電池コストの高騰が市場の不確定要因となっています。また、需要が急増した場合に供給が追いつくかも課題となります。
3. 結論:VDAの予測達成は可能か?
これらの要因を総合すると、2025年にEVの販売台数が前年比53%増加するというVDAの予測は、達成が難しい可能性が高いです。
- プラス要因:CO2排出規制の強化、メーカーのEV生産強化
- マイナス要因:補助金縮小による市場の冷え込み、充電インフラの不足、中国メーカーとの競争
今後、政府の政策がどれだけ市場を刺激できるかが鍵となります。もし効果的な税制優遇策やインフラ投資が進めば、成長の可能性は高まりますが、現状では53%成長はやや楽観的な予測といえるでしょう。
参考サイト
- Ausgerechnet die Autonation Deutschland bringt Europas Elektro-Zukunft in Gefahr
- German cabinet agrees proposals for tax relief on EVs, source says
- Deutschlands bedenklicher E-Auto-Knick
- WELT: Deutschlands bedenklicher E-Auto-Knick
- WELT: Autonation Deutschland bringt Europas Elektro-Zukunft in Gefahr
- Reuters: German cabinet agrees proposals for tax relief on EVs
- JETRO: ドイツEV市場レポート
- Mordor Intelligence: Germany Automotive High-Performance Electric Vehicles Market