メローニ首相とイタリアの同胞:安定政権を支える背景

(*本記事は2025年2月18日時点の情報に基づいて執筆されています。)

ジョルジャ・メローニ首相が率いる「イタリアの同胞(Fratelli d’Italia, FdI)」は、2022年の政権発足以来、イタリア国内で高い支持率を維持し続けています。右派政党としての強いイデオロギーを持ちながらも、現実的な政策運営を行い、安定した政権基盤を築いています。本記事では、メローニの生い立ち、彼女の政党が国民に受け入れられている理由、ドイツのAfDとの違い、外交政策のバランス、そして経済政策の課題について掘り下げ、今後の展望を考察します。

メローニの生い立ちと政治への道

ジョルジャ・メローニは1977年にローマで生まれ、若い頃から右派政治に関心を持っていました。15歳で極右政党「イタリア社会運動(MSI)」の青年組織に参加し、その後、2006年に国会議員として当選。2008年には31歳で閣僚となり、若くして政治の第一線に立ちました。

2012年、メローニは「イタリアの同胞(FdI)」を共同設立し、右派ナショナリズムを掲げる政党として育て上げました。FdIは、移民制限、国家主権の強化、伝統的価値観の尊重を政策の中心に据え、2022年の選挙で躍進し、政権を獲得しました。

なぜ国民に受け入れられているのか?

メローニ政権が国民に支持されている理由には、いくつかの要因があります。

  1. 移民政策の強化:イタリア国内で移民問題が深刻化する中、メローニ政権は厳格な移民制限を打ち出し、治安対策を強化しました。
  2. ナショナリズムの強調:EUの規制に対する反発を利用し、「イタリア第一主義」を訴えたことで、多くの国民の共感を得ました。
  3. 安定したリーダーシップ:メローニは過激な言動を抑え、現実的な政策運営を行うことで、中道層の支持も獲得。

安定した支持率の維持

メローニ政権は、2022年10月の就任以来、一貫して高い支持率を維持しています。発足当初の支持率は約30%でしたが、政権運営が評価されるにつれて上昇し、2023年には35~40%の範囲で安定。特に、2024年6月に実施された欧州議会選挙では「イタリアの同胞(FdI)」が26.6%の得票率を獲得し、右派連立政権の総得票率は47.4%に達しました。これは、イタリア国内で右派政権が引き続き強い支持を受けていることを示しています。

また、メローニ個人の支持率も安定しており、2024年初頭の世論調査では約45%の国民が「メローニ首相を支持する」と回答。これは、EU内の主要首脳の中でも比較的高い水準にあり、長期的な政権運営の基盤となっています。

ドイツのAfDとの違い

ドイツの右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」と比較すると、FdIはより現実的な政権運営を行っている点が特徴的です。

  • AfDは他党から連立を拒否されているが、FdIは右派連立政権を形成
  • FdIはファシズムを公には否定し、民主主義を重視
  • AfDはEU離脱や極端な民族主義を主張するが、FdIはEU改革を訴えるにとどめる

これにより、FdIは過激な極右政党とは一線を画しつつ、安定した政権運営を続けています。

外交政策のバランス

メローニ政権の特徴の一つは、外交面での巧みなバランスの取り方です。

  • EU:中央集権的なEUには批判的だが、EU離脱は主張せず、現実的な外交を展開。
  • アメリカ:トランプ大統領との親交もあり、NATOの強化を支持。イーロンマスクとの会談も実施。
  • ロシア:反ロシアの立場を明確にし、ウクライナへの支援を積極的に実施。
  • 中国:「一帯一路」からは離脱するも、経済協力は維持。

これにより、国際的な評価を受けながらも、独自の外交路線を展開しています。

経済政策と今後の課題

しかし、経済面では課題も多く、メローニ政権の最大の試練となっています。

  • 2023年のイタリアのGDP成長率は0.9% で、EU平均(0.6%)よりやや高いが、前年の4.0%から減速。
  • 2024年の成長率は0.7%と予測され、EU平均(1.3%)を下回る見込み
  • エネルギー政策の見直しにより、ロシアからのガス供給を削減する一方で、代替エネルギー政策がまだ軌道に乗っていない。

このように、現時点では経済政策の成果が見えにくく、今後の成長率の低迷が支持率低下につながる可能性も指摘されています。

まとめ:世界が注目する右派リーダー

ジョルジャ・メローニは、現在世界で最も注目される右派リーダーの一人です。彼女のリーダーシップのもと、イタリアは安定した政権運営を続け、EU、アメリカ、ロシア、中国と微妙なバランスを保ちながら外交を進めています。

しかし、経済政策の成果が不透明なままでは、今後の支持率低下もあり得るでしょう。メローニが今後も右派政権の象徴的存在として国際社会での影響力を維持できるのか、引き続き注目していきたいところです。

参考サイト:

  1. Le Monde
    (イタリアの経済成長と今後の不確実性について)
  2. Financial Times
    (イタリアの政治と経済の状況に関する詳細な分析)
  3. Reuters
    (イタリアのEU資金活用の遅れが成長に与える影響)
  4. Mizuho Research & Technologies
    (メローニ政権の経済政策とその影響について)
  5. JETRO
    (2024年の欧州議会選挙とイタリアの政治的動向)
この記事を書いた人
ひろ部長

海外で働きながら、経済・政治・宗教を中心に情報を発信しています。現在はフランスを拠点に、ヨーロッパ各国の政治制度や社会の動向を分析し、データベースのように体系的にまとめることを目指しています。

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