ステランティス:14のブランドを抱える自動車グループの未来

ステランティス(Stellantis)は、2021年にフランスのPSAグループとイタリア・アメリカのFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)が合併して誕生した世界有数の自動車メーカーです。その最大の特徴は、14ものブランドを傘下に持ち、それぞれ異なる市場で強みを発揮していることです。

これらのブランドには、

  • 大衆向けブランド(Peugeot、Citroën、Opel/Vauxhall、Fiat)
  • SUV・オフロード車ブランド(Jeep)
  • 高級・スポーツブランド(Alfa Romeo、DS Automobiles、Maserati、Lancia)
  • 商用車ブランド(Ram、Fiat Professional)
  • アメリカ市場向けブランド(Chrysler、Dodge) などが含まれています。

このように幅広いブランドを展開することで、北米・欧州・南米など複数の市場で高い競争力を維持してきました。しかし、多ブランド展開にはメリットとデメリットの両面があり、経営戦略の舵取りが今後の成長を左右します。

ステランティスの販売台数:世界5位

2024年の世界自動車メーカーの年間販売台数ランキングは以下のとおりです。

順位メーカー名販売台数(万台)
1トヨタ自動車1,082
2フォルクスワーゲングループ903
3ヒョンデ(現代)グループ723
4ゼネラルモーターズ(GM)600
5ステランティス540
6BYD427
7ホンダ381
8日産自動車335
9スズキ325
10BMW245

2023年の業績:売上高・利益・地域別戦略

ステランティスの2023年の業績は以下のとおりです。

項目数値前年比
売上高1,895億ユーロ+6%
純利益186億ユーロ+11%
調整後営業利益243億ユーロ+1%
営業利益率12.8%-0.6ポイント

地域別の戦略とポジション

地域2022年2023年
北米16.4%15.4%
中東・アフリカ16.7%23.7%
欧州9.9%9.8%
南米13.1%14.8%
中国・インド・アジア太平洋14.5%14.2%

欧州

  • 市場シェア 18.4%(フォルクスワーゲングループに次ぐ2位)
  • 商用車市場では 30%以上のシェア を持ち、圧倒的な強さ
  • PeugeotやCitroënのEVシフトを加速し、欧州の厳しい環境規制に対応

北米

  • 市場シェア 9.6%
  • JeepやRamが牽引するSUV・ピックアップ市場で強み
  • EV市場での競争力強化が急務

中国

  • 市場シェア 0.3% と低迷
  • 近年販売台数が減少し、現地メーカーに圧倒される
  • 中国EVメーカーLeapmotorとの提携を開始し、競争力を強化

Leapmotorとの提携:中国EV市場での巻き返し

ステランティスは、中国市場での競争力を取り戻すために、新興EVメーカー「Leapmotor(リープモーター)」と提携しました。

  • 2023年10月に15億ユーロを投資し、Leapmotorの株式20%を取得
  • 共同で「Leapmotor International」を設立し、LeapmotorのEVを中国国外に展開
  • 2024年から、LeapmotorのEV「T03」や「C10」を欧州市場に導入

この提携により、コスト競争力のあるEVの展開を加速し、EV市場でのシェア拡大を狙っています。

ステランティスの強みと弱み

✅ 強み(メリット)

  1. 多ブランド展開で幅広い市場をカバー
    • 欧州・北米・南米それぞれに適したブランドを展開
    • 低価格帯から高級車まで幅広いラインナップを提供
  2. プラットフォームの共通化によるコスト削減
    • EV開発で「STLAプラットフォーム」を各ブランドに適用し、コスト効率を向上
  3. 地域ごとの強みを活かせる
    • 欧州ではPeugeot・Citroën、北米ではJeep・Ram、南米ではFiatが強い
    • リスクを分散しながらグローバル戦略を展開

⚠️ 弱み(デメリット)

  1. ブランド間の競合(カニバリゼーション)
    • Opel、Peugeot、Citroënは似た市場をターゲットにしており、競合が発生
  2. 中国市場での競争力不足
    • 既存ブランドの販売が低迷し、新興EVメーカー(BYD、NIO、Tesla)に対抗できていない
  3. EV化の進行速度にばらつき
    • Jeep、Dodge、RamなどのブランドはEV転換が遅れており、北米市場での対応が課題

経営体制の立て直し

2024年12月にCEOのカルロス・タバレスが退任し、現在は暫定経営体制で運営されています。

  • ジョン・エルカン会長が暫定的な指揮を執る
  • 新CEO候補として、北米事業責任者アントニオ・フィローサ、最高購買責任者マキシム・ピカットが有力視

今後、新しい経営体制の下でどのようにブランド戦略を再構築し、成長を続けるのかが注目されます。

ステランティスは今後伸びていくのか?

ステランティスは、 ✅ 欧州・北米市場では強いブランドを持ち、商用車市場では圧倒的な存在感Leapmotorとの提携で、EV市場の競争力を強化コスト削減戦略により、利益率を高く維持できる

一方で、 ⚠️ 中国市場の巻き返しが成功するか不透明 ⚠️ ブランド間競争の調整が必要 ⚠️ EV戦略の統一が課題

今後、Leapmotorとの協業がうまくいくか、EV戦略をどれだけ効率的に進められるかが、成長の鍵を握るでしょう。

これからのステランティスの動向に注目していきましょう!

参考サイト

  1. MarkLineshttps://www.marklines.com/)
    → 自動車業界の市場データ、売上高、利益率の情報
  2. ロイター(Reuters Japan)https://jp.reuters.com/)
    → Leapmotorとの提携、中国市場の状況に関する情報
  3. Positenhttps://positen.jp/)
    → 欧州、北米、中国の市場シェア、販売台数の分析
  4. ESG Journal Japanhttps://esgjournaljapan.com/)
    → Leapmotorとの資本提携とグローバルEV展開の詳細
  5. ItalPassionhttps://www.italpassion.fr/)
    → ステランティスの戦略、収益性、経営陣の最新動向
この記事を書いた人
ひろ部長

海外で働きながら、経済・政治・宗教を中心に情報を発信しています。現在はフランスを拠点に、ヨーロッパ各国の政治制度や社会の動向を分析し、データベースのように体系的にまとめることを目指しています。

このブログでは、ニュースの表面的な報道にとどまらず、歴史的背景や各国の制度的な違いに着目し、独自の視点で解説します。特に欧州政治に関心がある方や、海外のリアルな情報を知りたい方に役立つ内容をお届けします。

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