(*本記事は2025年2月7日時点の情報に基づいて執筆されています。)
はじめに
2025年2月、ドイツは新たな総選挙を迎える。経済の低迷、移民問題、環境政策といった重大な課題を抱える中、選挙の結果は今後のドイツのみならず、ヨーロッパ全体の方向性にも影響を与えることになる。本記事では、メルケル政権とショルツ政権の経緯を振り返りつつ、現在の主要政党の立場とAfDの台頭について詳しく解説する。
メルケル政権(2005-2021):安定と分断
アンゲラ・メルケルが率いた16年間の政権は、経済成長と国際的なリーダーシップで評価された。一方で、移民政策やEU統合の推進が国内の分断を生む要因となった。
- 経済政策
- 社会市場経済を推進し、ドイツの輸出競争力を強化。
- 2010年代には「ドイツ経済の黄金期」とも呼ばれる安定した成長を実現。
- 移民政策
- 2015年のシリア難民危機時に「Wir schaffen das(私たちはできる)」と述べ、大量の移民を受け入れ。
- これが社会の分断を招き、AfD(ドイツのための選択肢)などの極右政党が台頭する契機となる。
- エネルギー政策
- 福島原発事故後、「脱原発政策」を決定。
- 再生可能エネルギーの推進に取り組むも、エネルギー価格の高騰を招いた。
ショルツ政権(2021-2025):不安定な連立と低迷する支持率
メルケル政権後、2021年の選挙で社会民主党(SPD)のオラフ・ショルツが首相に就任。しかし、「信号連立(SPD + 緑の党 + FDP)」は多くの課題に直面した。
- 経済の低迷
- インフレとエネルギー価格の上昇により、国民の生活が圧迫。
- 企業の競争力が低下し、経済成長率も鈍化。
- 移民政策の混乱
- 移民受け入れを継続する一方で、治安問題が懸念される。
- AfDの支持率が急上昇し、移民政策が選挙の重要争点に。
- 環境政策の行き詰まり
- 環境規制の強化が経済界からの反発を招く。
- 再生可能エネルギーへの転換が進むも、コスト増が問題視される。
2025年総選挙と各政党の立場
- CDU/CSU
- 支持率:約28%
- 党首:フリードリヒ・メルツ(Friedrich Merz)
- 経済政策:企業の競争力強化と減税。
- 移民政策:移民規制の強化。
- 環境政策:エネルギー安全保障のために原子力発電を再評価。
- AfD
- 支持率:約21%
- 党首:ティノ・クルパラ(Tino Chrupalla)
- 経済政策:ユーロ圏からの離脱やビットコインの規制緩和を主張。
- 移民政策:移民受け入れの大幅な制限と国境管理の強化。
- 環境政策:気候変動対策に懐疑的で、原子力発電の継続利用を支持。
- SPD
- 支持率:約17%
- 党首:ラーズ・クリングバイル(Lars Klingbeil)
- 経済政策:富裕層への課税強化と社会福祉の充実。
- 移民政策:移民受け入れの継続と統合支援。
- 環境政策:気候変動対策として再生可能エネルギーの導入を加速。
- 緑の党
- 支持率:約13%
- 党首:ロベルト・ハーベック(Robert Habeck)
- 経済政策:環境投資を通じた持続可能な経済成長を提唱。
- 移民政策:寛容な移民受け入れと人権尊重を強調。
- 環境政策:再生可能エネルギーの拡大と気候中立目標の前倒し。
- FDP
- 支持率:約4%
- 党首:クリスティアン・リントナー(Christian Lindner)
- 経済政策:規制緩和と減税による経済活性化。
- 移民政策:高度人材の受け入れを支持する一方、不法移民対策の強化を主張。
- 環境政策:市場メカニズムを活用した環境対策を提案。
まとめ:ドイツの政治はどこへ向かうのか
2025年2月の総選挙は、ドイツの政治の転換点となる。AfDの台頭、移民問題、経済の低迷など、多くの課題が山積している。選挙の結果次第では、ドイツ国内の政界再編が進む可能性もある。選挙後の動向を注視しながら、今後のドイツの政治の行方を見守る必要がある。