はじめに
日本の財政支出(政府支出)は年々膨らみ、GDPの45〜50%を占める規模に達しています。この金額は単なる国家の会計数字ではなく、私たちの生活、収入、そして社会の構造そのものに大きな影響を与えています。驚くべきことに、こうした政府支出は、最終的に民間に流れ込み、「誰かの所得」や「誰かの利益」になっているのです。
しかし、政府支出の恩恵を受けている人々ほど政治への関心が高く、選挙に積極的に参加する一方で、日常的に政治に無関心な人たちは、自分がその支出の負担者であることにも気付かず、選挙でも意思表示をしません。その結果、日本の政治は支出の受益者層に偏りやすくなり、政府支出は拡大を続けているのです。
政府支出とは何か?
政府支出とは、国や地方自治体が行うあらゆる公的支出を指します。代表的なものとしては以下のようなものがあります:
- 年金、医療、介護などの社会保障給付
- 公共事業(インフラ整備、防災など)
- 公務員の給与
- 教育、子育て支援
- 地方交付税、補助金
こうした支出の原資は、主に税収と国債(=借金)です。つまり、政府の支出は国民から集めたお金、または未来の国民が返済することになる借金によって成り立っています。
誰が恩恵を受けているのか?
政府支出の恩恵を直接・間接に受けているのは以下のような層です:
- 高齢者:年金、医療費補助、介護サービス
- 公務員:安定した雇用と給与
- 医療・介護・福祉業界:社会保険制度を通じた収益
- 建設業界:公共事業による受注
- 教育関係者:公立学校や補助金など
こうした人々は、自分たちの生活の質や経済的安定が政府支出に強く依存しているため、政府支出の削減に対して非常に敏感です。したがって、彼らは「支出を維持・拡大する政治家や政党」を支持する傾向があります。
投票行動に表れる利害の違い
政治に関心が高く、選挙に積極的に参加する層は、往々にして政府支出の受益者です。一方で、現役世代や若者、中小企業経営者など、「支出の原資を負担している側」は、政治に対する関心が低く、選挙の投票率も低い傾向があります。
これが政治の構造に大きな影響を及ぼしています。高齢者層の投票率は60〜70%台に達する一方で、若年層の投票率は30%台にとどまっています。その結果、政治家は票を確保するために、どうしても「受益者層」に有利な政策を優先しやすくなるのです。
無関心が生む“静かな搾取”
政府支出の恩恵をあまり受けていない、あるいはその恩恵に気付いていない層が政治に無関心であり続けると、政府支出はどんどん一部の受益者に偏っていきます。そして、その支出を支えるための税負担や社会保険料は、主に現役世代や将来世代にのしかかる構図になります。
これは「静かな搾取」とも言えます。声を上げる人たちの意見ばかりが政治に反映され、沈黙している人たちの負担だけが増えていくのです。
本当に必要なのは、関心と行動
この構造を変えるために必要なのは、一人ひとりが「自分はどこに立っているのか」を理解し、政治に関心を持ち、選挙に参加することです。
税金や社会保険料を納めている人は、自分が支出の“原資”を担っているという事実を認識すべきです。そして、自分のお金がどう使われているのかに目を向け、その使い方に納得できないのであれば、投票という手段で意思を示すことが不可欠です。
おわりに
政治は一部の人だけのものではありません。政府支出という巨大なお金の流れは、私たちすべての生活に関係しています。だからこそ、「自分には関係ない」と無関心でいることが、結果的に自分の生活にしわ寄せをもたらす可能性があるのです。
一人でも多くの人がこの構造に気付き、投票によって意思表示をすること。それが、より公平で持続可能な社会を築く第一歩になるはずです。
参考にしたサイト
- 内閣府『国民経済計算』
https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/menu.html
→ GDPや政府支出の比率など公式統計が確認できます。 - 財務省『日本の財政関係資料』
https://www.mof.go.jp/policy/budget/fiscal_condition/
→ 国の歳出・歳入の構造や社会保障費の内訳に関する最新資料。 - 総務省『選挙に関する統計』
https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/data/index.html
→ 投票率の世代別傾向などが確認できます。 - OECD『Government at a Glance』
https://www.oecd.org/gov/government-at-a-glance-22214399.htm
→ 国際比較での政府支出比率や福祉支出の参考に。