■ 高市新総裁誕生と、もう一人の“女性首相”
2025年10月4日、自民党総裁選で高市早苗氏が新たに選出されました。
この結果、日本では初めて女性の首相が誕生することになります。
日本の政治史において画期的な出来事であり、国内外から注目が集まっています。
G7の中で、女性首相を務めているのは現在イタリアのジョルジャ・メローニ氏ただ一人です。
つまり高市氏の登場は、G7の舞台に新たな「女性リーダーの現実主義」という潮流を生み出す可能性を秘めています。
実は、この二人には驚くほど多くの共通点があります。
どちらも強い保守的信念を持ちながら、同時に冷静で現実的な政策判断を行うリーダーです。
今回は、この二人の女性政治家が示す「現実主義の政治」について掘り下げてみたいと思います。
■ 理想より現実を重んじるリーダーの登場
戦後の日本やヨーロッパでは、「平和主義」「多様性」「リベラルな価値観」が長く政治の主流でした。
それは確かに人道的で美しい理想ですが、現実の課題――少子化、経済停滞、安全保障の不安定化、
そして文化的分断――に直面したとき、理想だけでは社会を支えきれない局面が訪れています。
こうした中で、理想よりも現実を重視するリーダーが求められるようになりました。
高市早苗氏とジョルジャ・メローニ首相は、まさにその代表例です。
二人に共通しているのは、感情やイデオロギーに流されず、現実の国益に基づいて政策を組み立てている点です。
■ ジョルジャ・メローニ:情熱と現実を両立させた改革者
イタリアのジョルジャ・メローニ首相は、2022年に同国史上初の女性首相として就任しました。
「神・家族・祖国(Dio, famiglia, patria)」という明確なスローガンを掲げ、
保守的ながらも感情に訴える演説スタイルで国民の支持を集めました。
しかし、メローニ氏の真骨頂は情熱ではなく現実主義にあります。
就任後はEUとの対立を避け、財政健全化と成長戦略を両立。
対ロシア制裁やNATO連携にも責任ある姿勢を示し、
感情ではなく国際社会との協調を重視しました。
また、出生率の低下や家族の崩壊に歯止めをかけるため、
家族支援・教育・雇用政策を国家の中心に据えています。
「家族は社会の最小単位であり、国家の礎である」という信念は、
一見保守的に見えて、実は社会の持続可能性を守るための極めて現実的な政策です。
結果として、メローニ政権はイタリアにおいて久々の安定政権となり、
経済も堅調に推移しています。
これは、理想より現実を見据えたリーダーシップが、社会を安定へ導いた好例といえるでしょう。
■ 高市早苗:理論と信念を備えた現実主義者
一方の高市早苗氏は、日本初の女性首相となる見込みです。
官僚出身の政策通であり、経済・安全保障分野で実務を熟知しています。
これまでのキャリアを通じて、**「感情よりデータ、理想より現実」**という姿勢を貫いてきました。
高市氏が主導してきた経済安全保障政策は、まさに現実主義の象徴です。
サプライチェーン強化や技術流出防止、半導体支援策など、
理想論ではなく国益と産業競争力を基盤に据えています。
防衛面では憲法改正や反撃能力の保持を主張し、
経済面では「積極財政による成長促進」を掲げています。
また、エネルギー政策では感情的な原発反対論に流されず、
「現実的に安定供給を確保することが国民生活を守る第一歩」と語ります。
このように、高市氏は理想や人気取りではなく、
現実を直視したうえで“何が最善か”を考えるリーダーなのです。
■ 国家と文化を守る「現実主義」
高市氏とメローニ氏の共通点は、「文化と国家を守る」という目的を共有している点にもあります。
二人はどちらも、単に経済成長を目指しているわけではありません。
国家を支える基盤――家族、教育、文化、伝統――を重視し、
それを現代社会の中でどう再構築するかを考えています。
国 | 主な課題 | 政策の方向性 |
---|---|---|
日本 | 少子高齢化・技術流出・防衛不安 | 経済安保、家族支援、科学技術強化 |
イタリア | 移民急増・財政制約・価値観の空洞化 | 国境管理、家族政策、文化の再定義 |
このように、二人の政治姿勢は「守るために変える」という点で一致しています。
それは単なる保守ではなく、現実主義的な改革保守といえるものです。
理想に酔わず、現実の中で最善を探る姿勢が、
彼女たちを“新しい時代のリーダー”たらしめているのです。
■ 女性だからこそ見える「生活の現実」
興味深いのは、二人ともフェミニズムを前面に出していないという点です。
「女性であること」を政治的な武器にせず、
「生活者としての現実」を出発点に政策を組み立てています。
高市氏は、家庭と仕事の両立の現実を知る立場から、
育児支援や働き方改革を現実的な視点で推進しています。
メローニ氏も、母親としての経験から出生率問題に正面から向き合い、
「家庭を支えることこそ、社会を支えること」と明言しています。
つまり、二人の女性リーダーは、
“性別の政治”ではなく、“生活の政治”を実践しているのです。
その現実主義が、多くの国民の共感を呼んでいます。
■ 「右派化」ではなく「現実化」
欧米メディアでは、メローニ氏や高市氏を「右派」「ナショナリスト」と評する報道が目立ちます。
しかし実際には、彼女たちの主張は極端ではありません。
むしろ、理想主義的な政策では国を支えきれなくなった現実に対し、
冷静に対応しているだけなのです。
つまり、彼女たちの政治は「保守化」ではなく**「現実化」**です。
- グローバリズムから国家主権へ
- 理想主義から現実主義へ
- 権利論から責任論へ
これは、世界全体が向かっている新しい政治潮流であり、
その最前線に女性リーダーが立っているということ自体、時代の転換を示しています。
■ 分断を超える「母性的統合力」
現実を語る政治は、常に反発を生みます。
「保守的すぎる」「変化を拒んでいる」との批判もあるでしょう。
しかし、高市氏もメローニ氏も、対立を深めるのではなく、
社会を再びまとめ直すことを目指しています。
メローニ氏は「異なる意見も家族の中で語り合うべき」と述べ、
高市氏も「国益のために立場を超えて協力することが大切」と語ります。
そこには、強いリーダーシップと同時に、
“包み込む力”を持つ新しい女性政治の形が見られます。
感情ではなく、理性と共感で社会を再構築していく姿勢は、
分断の時代にこそ必要なリーダー像といえるでしょう。
■ 現実主義が未来を変える
高市早苗氏とジョルジャ・メローニ首相。
二人の女性リーダーが示すのは、
「理想より現実を、感情より理性を」という新しい政治のあり方です。
女性であることが特別なのではなく、
女性だからこそ見える“現実”がある。
その現実を正確に捉え、冷静に政策へと落とし込む姿勢こそが、
今の世界に最も必要とされているものだと思います。
G7の中で、二人の女性リーダーがどのように手腕を発揮していくのか。
そして、現実主義という新しい政治の流れが、
分断された世界をどう変えていくのか。
その行方に、これからも注目していきたいと思います。