(*本記事は2025年2月8日時点の情報に基づいて執筆されています。)
2024年7月4日に行われたイギリス総選挙では、労働党が圧勝し、14年ぶりに政権を奪還しました。一方、保守党は歴史的な大敗を喫し、自由民主党も議席を大幅に増やしました。本記事では、各党の政策と選挙結果、国民の保守党に対する不満、そして労働党政権に対する期待について詳しく解説します。
また、この選挙結果を受け、首相がリシ・スナク(保守党)からキア・スターマー(労働党)に交代しました。
1. 各党の政策と選挙結果
(1) 労働党(Labour Party)
党首
- キア・スターマー(Keir Starmer)
主な政策
- 経済改革:最低賃金の引き上げ、中小企業支援、法人税改革。
- 公共サービス強化:NHS(国民保健サービス)の待機時間短縮、教育分野での教員増員。
- 環境政策:2030年までに英国をクリーンエネルギー大国にするため、再生可能エネルギーの推進やEV(電気自動車)の普及促進。
- EUとの関係改善:Brexitの影響を和らげるため、貿易や人材交流の強化を検討。
選挙結果
- 獲得議席数:411(前回203議席から大幅増)
- 得票率:約40%
- 主要な支持層:都市部の中間層、労働者、若年層、公共サービスの向上を求める層
(2) 保守党(Conservative Party)
党首
- リシ・スナク(Rishi Sunak)
主な政策
- 財政健全化:増税を抑え、国の借金を減らす。
- 移民政策の厳格化:不法移民の抑制とビザ発給基準の強化。
- エネルギー政策:炭素回収・貯留(CCS)技術の推進、新型モジュール炉(SMR)の開発。
- EV政策の後退:2030年のガソリン車販売禁止計画を見直し、企業や消費者の負担軽減を優先。
選挙結果
- 獲得議席数:121(前回365議席から大幅減)
- 得票率:約24%
- 主要な支持層:高齢者、地方都市の保守的な有権者、企業経営者
(3) 自由民主党(Liberal Democrats)
党首
- エド・デイビー(Ed Davey)
主な政策
- EUとの関係修復:将来的なEU再加盟の可能性も視野に、欧州との協力強化。
- 環境政策の強化:気候変動対策の推進、EVインフラ整備。
- 地方分権の推進:地方自治体への権限移譲。
選挙結果
- 獲得議席数:72(前回11議席から大幅増)
- 得票率:約13%
- 主要な支持層:都市部のリベラル層、環境意識の高い有権者
2. 国民の保守党に対する不満
保守党が大敗した背景には、以下のような国民の不満がありました。
(1) 経済の低迷と生活費危機
- 物価高騰やエネルギー価格の上昇が続き、生活費の負担が増大。
- 住宅ローン金利の上昇により、国民の購買力が低下。
- 保守党の財政政策が十分に機能せず、低所得者層の不満が高まった。
(2) 政治の不安定性
- ボリス・ジョンソン、リズ・トラス、リシ・スナクと、短期間で首相が交代し、政策の一貫性が欠如。
- パーティーゲート(新型コロナウイルス規制違反問題)などのスキャンダルにより、国民の信頼を失った。
(3) Brexit後の混乱
- EU離脱後の経済成長が期待されたが、貿易や労働力不足の問題が深刻化。
- EUとの関係改善が進まず、企業活動に影響を及ぼした。
(4) 環境政策の後退
- 2030年のガソリン車販売禁止計画を見直すなど、環境政策に対する後ろ向きな姿勢が批判された。
- 特に若年層や都市部の有権者からの支持を失った。
3. 労働党政権に対する国民の期待
労働党が政権を奪還したことで、国民は以下のような期待を寄せています。
(1) 経済の安定と生活費の軽減
- 最低賃金の引き上げや税制改革を通じて、低所得者層の負担を軽減。
- 中小企業への支援を強化し、経済成長を促進。
(2) 公共サービスの充実
- NHSの待機時間短縮や医療体制の強化。
- 教育分野の改革により、教育の質を向上。
(3) EUとの関係改善
- Brexit後の貿易摩擦を軽減し、経済の安定化を図る。
- 人材交流を促進し、労働力不足を解消。
(4) 環境政策の強化
- 再生可能エネルギーの推進により、クリーンエネルギー大国を目指す。
- EV普及を促進し、環境負荷を軽減。
まとめ
2024年のイギリス総選挙では、労働党が圧勝し、国民の期待を背負って新たな政権が誕生しました。保守党の失策により、経済や公共サービスへの不満が高まり、政権交代の流れを生みました。今後、労働党がどのように政策を実行し、国民の期待に応えるかが注目されます。