【徹底解説】スコット・ターナー長官が挑む住宅都市開発省(HUD)改革──DOGEと進める「役所再生」とは?

米国政治

2025年、トランプ政権の再登板とともに、アメリカの連邦政府には大きな変化の波が押し寄せています。なかでも注目を集めているのが、住宅都市開発省(HUD)の抜本的な改革です。その指揮を執るのが、新たにHUD長官に就任したスコット・ターナー氏。彼はトランプ政権の中でも特に「現場主義」と「民間連携」を重視する改革派として知られています。

さらに、この改革には「DOGE(政府効率化省)」という異色の機関が深く関わっており、その連携によりHUDがどこまで変われるのか、国内外から注目が集まっています。


スコット・ターナー長官とは何者か?

元NFL選手であり、テキサス州議会議員、トランプ政権一期目では「機会ゾーン」政策の中心的推進者を務めたスコット・ターナー氏は、いわば「グラスルーツからの変革者」です。現場をよく知る実務家としての手腕が買われ、2025年2月、HUD長官に就任しました。

彼の哲学は明快です。

「ワシントンの上から目線ではなく、地域と民間の手で、持続可能な住宅政策をつくる。」

そんな信念のもと、ターナー長官はDOGEと手を組み、これまでになかったスピードと大胆さでHUD改革を進めています。


DOGEとは何か?政府効率化の中核機関

DOGE(Department of Government Efficiency)は、イーロン・マスク氏が民間から招かれて指揮をとる、連邦政府の構造改革を目的とした新機関です。2025年のトランプ再登板とともに設立され、すでに教育省、EPA、労働省などで大規模な人員・制度改革を推進してきました。

DOGEの特徴は、「業務の見える化」と「大胆なスリム化」です。過剰な官僚主義と非効率な支出構造を改革し、役所が本来果たすべき使命に集中できる体制をつくろうというものです。


HUD改革の柱:大胆な人員削減と地方移譲

スコット・ターナー長官は就任直後から、HUDの構造改革に着手しました。具体的には次の5つの柱で改革が進んでいます。

① 大規模な人員削減

DOGEと連携し、HUDの職員数を最大50%削減する計画が進行中です。とくに本庁の間接部門と、機能重複が多かった地域事務所を対象に合理化が図られています。人件費の削減により、プログラム実行に使える予算が増えるという副次的効果も期待されています。

② 地方事務所の再編

全米に点在していたHUDの地方事務所は、約半数が閉鎖される予定です。その代わりに、地方自治体や民間団体と直接提携する「アウトソーシングモデル」に転換。州政府や郡レベルの責任者に実務を委ね、連邦政府は監督・助言に徹する構造へと移行しています。

③ 公営住宅と住宅支援の見直し

老朽化が進み犯罪の温床ともなっていた公営住宅制度についても、民間事業者とのパートナーシップを導入。新たな開発では連邦土地を活用し、建設コストを抑えた住宅供給が進められています。支援の対象も、合法居住者に限定する方針が打ち出されました。

④ 差別是正制度の再設計

オバマ政権時代の規則「AFFH(積極的住宅差別是正)」が撤廃され、ゾーニングなどの都市計画権限は州・市に委ねられます。地方の文化やニーズに応じた柔軟な制度設計が可能となり、開発の自由度が高まりつつあります。

⑤ 機会ゾーンの復活と強化

スコット・ターナー氏が以前に成功させた「機会ゾーン」制度も再び注目されています。低所得地域に民間投資を呼び込み、税制優遇を通じて街の再生を目指すこの制度は、HUDの再建と強く連動しています。


課題と懸念もある

もちろん、このような急進的な改革には批判の声もあります。公平住宅局(FHEO)の機能縮小により、住宅差別に対する監視が緩むのではないかという懸念。ホームレス支援や災害時の復旧支援の遅延リスク。そして何より、人員削減による行政サービスの低下――。

しかし、これらの課題は「効率化への痛み」であり、改革の本質ではないとターナー長官は語ります。

「我々の目標は“人を減らすこと”ではなく、“本当に必要な支援を、必要な人に届ける仕組み”を再構築することです。」


改革のその先へ──真の「役所再生」なるか

HUDの再編は、単なる人員削減でもなければ、福祉の切り捨てでもありません。それはむしろ、連邦政府が再び“本来の役割”に立ち返る試みなのです。

かつて肥大化しすぎたHUDは、スコット・ターナーとDOGEによって今、軽やかで俊敏な機関へと生まれ変わろうとしています。福祉を守りながらも、自立と成長を促す住宅政策。中央主導ではなく、地域と民間を信頼する構造。

これは、現代アメリカの行政が抱える根本的な課題への答えの一つかもしれません。


まとめ:本気の改革が、期待を呼ぶ

トランプ政権のもとで進むHUD改革は、かつてないスピードと規模で進行しています。スコット・ターナー長官のリーダーシップと、DOGEによる徹底した効率化の融合は、アメリカの住宅政策に新たな可能性をもたらしています。

もちろん、課題はあります。しかし、これまで見過ごされてきた非効率の山を前にして、現場を知るリーダーが立ち上がった意味は大きい。もしこの改革が成功すれば、それは単なる省庁改革にとどまらず、「行政のあるべき姿」に一石を投じるモデルケースとなるでしょう。

今後も、この取り組みから目が離せません。

🔎 参考にした公式・報道サイトと補足情報

  1. HUD公式サイト(hud.gov)
     ▶ HUD長官就任記事、施策概要など:
     https://www.hud.gov/news/hud-no-25-025
     → 就任日、タスクフォース設置、支援対象の見直しなどの一次情報。
  2. Department of the Interior(内務省)公式リリース
     ▶ 連邦土地活用による住宅開発推進の共同声明:
     https://www.doi.gov/pressreleases/icymi-secretary-burgum-hud-secretary-turner-announce-joint-task-force-reduce-housing
     → ターナーとバーガム内務長官の連携、土地供給を通じた価格抑制戦略。
  3. Punchbowl News(政治専門メディア)
     ▶ ターナー長官のインタビュー、機会ゾーン戦略:
     https://punchbowl.news/article/vault/hud-secretary-scott-turner-trump-housing-agenda
     → 「現場主義」「市場重視」の政治姿勢が語られている。
  4. New York Post(NYポスト)
     ▶ AFFH規則の撤廃に関する記事:
     https://nypost.com/2025/02/26/us-news/hud-secretary-turner-to-scrap-costly-federal-zoning-rule-trump-warned-would-destroy-suburbs
     → ゾーニング規制の撤廃方針が明記され、郊外地の自由な住宅開発が注目されている。
  5. Business Insider
     ▶ DOGE(政府効率化省)の概要とマスク氏の関与:
     https://www.businessinsider.com/elon-musk-doge-cuts-federal-worker-firings-government-plan-2025-4
     → DOGEがいかにHUDなどに影響しているかを示す有用資料。
  6. Padilla上院議員公式サイト
     ▶ HUDの地方事務所閉鎖に関する懸念と議会書簡:
     https://www.padilla.senate.gov/newsroom/press-releases/padilla-presses-for-answers-on-doge-cuts-to-critical-housing-programs-and-staff
     → 政策の影響や批判的視点も網羅。
この記事を書いた人
ひろ部長

海外で働きながら、経済・政治・宗教を中心に情報を発信しています。現在はフランスを拠点に、ヨーロッパ各国の政治制度や社会の動向を分析し、データベースのように体系的にまとめることを目指しています。

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